保険金にかかる税金(控除と受取人指定)
- 保険金の種類によって課税対象・非課税扱いに分かれる
- 契約者・被保険者・受取人の組み合わせで税金の種類も変わってくる
- 節税対策として活用するなら相続税となるように設定する
保険金受け取り時にかかる税金
生命保険には保険の種類や契約形態によって保険金や給付金を受け取る際に課税対象となるものがあり、保険会社から受け取るお金のすべてに税金がかかる訳ではありません。
保険金の種類 | 概要 |
---|---|
死亡保険金 | 被保険者が亡くなった時に支払われる保険金 |
満期保険金 | 保険期間が満期を迎えたときに支払われる保険金 |
個人年金保険の年金 | 個人年金保険の年金支払開始時に年金として支払われるお金 |
祝い金・生存給付金 | 学校への入学時など一定の年齢に達したときに生存している場合に支払われる給付金 |
解約返戻金 | 保険を途中で解約・失効したときに支払われるお金 |
万が一の事態の備えの保障として頼りになるのが生命保険ですが、死亡保険金や満期保険金、解約返戻金などを受け取る際には税金がかかります。生命保険を契約するときの契約者、被保険者、受取人の関係によって課税の種類は異なり、相続税や贈与税、所得税や住民税のいずれかとなります。
保険金の種類 | 概要 |
---|---|
入院給付金 | 被保険者が入院した際に被保険者に支払われる給付金 |
通院給付金 | 治療のために通院した場合に被保険者に支払われる給付金 |
手術給付金 | 被保険者が手術を受けた時に支払われる一時金 |
特定疾病給付金 | 被保険者が3大疾病(ガン・急性心筋梗塞・脳卒中)になった時に支払われる保険金 |
リビング・ニーズ特約 の保険金 |
被保険者が余命半年と宣告された時に生前に支払われる死亡保険金の一部 |
介護保険金(一時金・年金) | 所定の介護状態になった時に支払われる保険金 |
障害給付金 | 不慮の事故で180日以内に所定の身体障害状態になった時に支払われる給付金 |
就業不能給付金 | けがや病気で就業不能状態になった場合に支払われる一定額の給付金 |
医療保険やガン保険・介護保険などけがや病気に対して支払われる給付金は金額にかかわらず非課税となります。上記の他にも「高度障害保険金」や「先進医療給付金」「災害(疾病)療養給付金」「がん診断給付金」などがあります。
また被保険者本人が受け取る場合だけでなく、配偶者や直系血族(親・子・孫・祖父母)または生計を一にするその他の親族が受け取った場合も非課税となります。
一般的に非課税の保険金や給付金の税金の申告は不要となりますが、確定申告で医療費控除を受ける際は負担した医療費から入院給付金などを差し引く必要があります。さらに非課税で受け取った保険金や給付金が相続財産として引き継がれる際は、相続税の課税対象となるので注意が必要です。
死亡保険金にかかる税金と控除
課税対象となる保険金・給付金を受け取る際には、生命保険の契約者・被保険者・保険金受取人の契約形態によって税金の種類が異なります。生命保険にかかる相続税では非課税枠や基礎控除などもあり、場合によっては受取額に大きな差が生じる可能性もあります。
契約形態 | 契約者と被保険者が同一 | 契約者と受取人が同一 | 契約者・被保険者・受取人が それぞれ異なる |
|
---|---|---|---|---|
契約者 | 夫 | 夫 | 夫 | 夫 |
被保険者 | 夫 | 夫 | 妻 | 妻 |
保険金受取人 | 妻または子 | 相続人以外 | 夫 | 子 |
税金の種類 | 相続税 | 相続税 | 所得税 一時金で受領 ⇒ 一時所得 年金で受領 ⇒ 雑所得 |
贈与税 |
非課税枠の有無 | ○ | × | △ | × |
死亡保険金を受け取る際にかかる税金は、保険の契約者・被保険者・保険金の受取人が誰かによって税金の種類が違い、相続税もしくは贈与税、所得税・住民税のいずれかとなります。
契約者と被保険者が同一の場合
例えば契約者と被保険者が同一の場合は「相続税」となり、死亡保険金受取人が妻または子などの法定相続人の場合は相続により取得したものとみなされ、一定の金額「500万円×法定相続人」が非課税となります。
なお非課税金額計算上、相続放棄した者も法定相続人数に含まれますが、相続放棄(のちリンク)をした者が保険金を受け取っても非課税金額の適用を受けることはできません。
また相続税には基礎控除があり、保険金を合わせた遺産の金額から非課税金額や債務控除額を差し引いた残りの金額が基礎控除の範囲内であれば、相続税はかかりません。また保険金受取人が相続人以外の場合は、遺贈により取得したものとみなされるため非課税金額の適用を受けられません。
相続税の基礎控除額の計算方法
3,000万円+600万円×法定相続人数
契約者と受取人が同一の場合
契約者と死亡保険金の受取人が同一の場合は「所得税」となり、この場合の死亡保険金は受け取り方法によって「一時所得」と「雑所得」に分類されます。死亡保険金を一時金で受領すると一時所得となり、年金で受領すると雑所得となります。死亡保険金を年金で受領した場合には年金を受け取る際に源泉徴収されます。
一時所得(死亡保険金以外の一時所得なし)の計算方法
(死亡保険金受取総額 - 払込保険料 - 一時所得の特別控除額50万円) /2
契約者・被保険者・受取人それぞれ異なる場合
契約者・被保険者・受取人それぞれが違う場合は、死亡保険金を受け取った人は契約者から贈与を受けたとみなされ「贈与税」となります。
贈与税は保険金を含め他に受け取った金額の年間合計額が対象となり、税率が高いうえ基礎控除額(110万円までの場合はその全額、110万円を超える場合は一律110万円)も少なく保険金が税金で大幅に減ってしまいます。したがって死亡保障のある保険を契約する際には契約形態に注意することが大切です。
満期保険金にかかる税金と控除
契約形態 | 契約者と受取人が同一 | 契約者と受取人が異なる |
---|---|---|
契約者 | 夫 | 夫 |
被保険者 | 夫または妻 | 夫または妻 |
受取人 | 夫 | 妻または子 |
税金の種類 | 所得税 保険期間5年超 ⇒ 一時所得 保険期間5年以下 ⇒ 源泉分離課税 |
贈与税 |
非課税枠の有無 | △ | × |
契約者と受取人が同一の場合
満期保険金を受け取る際は、契約者と保険金受取人が同じであっても保険期間によって税金の種類は異なります。
例えば保険期間が5年超の契約の場合は一時所得となり、満期保険金額から支払った保険料総額の差額が50万円以内であれば非課税となります。またその差額が50万円を超える場合は満期保険金以外の他に一時所得がないとすれば、一時所得の特別控除50万円をさらに差し引くことができ、課税対象となるのはその金額の2分の1の金額となります。
一方で保険期間が5年以下の契約は源泉分離課税となり、満期時の受取金額と払込保険料との差額に対して税金20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)がかかるため、満期保険金額から税金を差し引かれた金額を受け取り確定申告をする必要はありません。
また、満期保険金を年金で受け取る場合は公的年金以外の雑所得となり、年金を受け取る際に所得税が源泉徴収されます。(※復興特別所得税は、平成49年12月31日まで課税されます)
保険期間5年超の場合の所得税の課税対象額
(満期保険金 - 払込保険料総額 - 50万円)/2
契約者と受取人が異なる場合
契約者と満期保険金の受取人が異なる場合は、満期保険金が契約者からの贈与とみなされ贈与税の課税対象となります。死亡保険金の受け取り時と同様に、こちらも贈与税の課税対象額は満期保険金から基礎控除額110万円を差し引いた金額となります。
個人年金保険の年金にかかる税金と控除
契約者形態 | 契約者と受取人が同一 | 契約者と受取人が異なる |
---|---|---|
契約者 | 夫 | 夫 |
被保険者 (生存してる場合) |
夫または妻 | 夫または妻 |
受取人 | 夫 | 妻 |
税金の種類 | 年金受取人に対し、毎年受け取る年金に所得税(雑所得) | 年金受取人に対し、初年度のみ贈与税 さらに2年目以降毎年受け取る年金に所得税(雑所得) |
個人年金保険は年金受給前に被保険者が亡くなった場合は、一時金で死亡給付金(死亡保険金)が支払われますが、被保険者が生存していて契約者と年金受取人が同一の場合は、毎年受け取る年金は雑所得として所得税と住民税の課税対象となります。
また契約者と年金受取人が異なる場合は、年金受取人に対して初年度のみ贈与税がかかり、さらにその後毎年受け取る年金に対しても所得税(雑所得)がかかります。この雑所得が25万円以上になる場合は、保険会社が雑所得の10%を源泉徴収し、残りを年金として支払われることになります。
そして雑所得が25万円未満の場合は源泉徴収されないので確定申告の必要がありませんが、25万円以上の場合は雑所得として他の所得と総合して確定申告する必要があります。このように誰が保険料を払って(=契約者)誰が年金を受け取る(受取人)のかがポイントとなり、契約者と受取人が異なる場合は税金が多くかかるので注意が必要です。
雑所得の計算方法
雑所得の金額 = 1年間で受け取った年金額 - 必要経費である保険料(総払込保険料の1/10)
参考URL:国税庁『死亡保険金を受け取ったとき』
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